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現場の漏れ問題と漏洩対策

1. 業種別に漏れの「調査報告書」から見た具体例

日本油空圧工業会と機械振興協会技術研究所が主体となって行った「油圧システムの油漏れに関する面接調査報告書」があります。主なデータの概要をまとめて表1に示します。

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(1)製鉄所

製鉄所は漏れの問題について真剣に取り組んでいる業種の一つといえます。それはシーリングテクノロジーから見ると製鉄技術はシール技術に対して決して良い環境ではないことに起因します。表1に示したように製鉄の過程は高温で多湿,粉塵が多くまた耐火性を要するため,作動液には難燃性の水グリコールが用いられているなど,シーリングテクノロジーから見ると,過酷極まりない環境といえます。

製鉄所で用いられている機器は比較的高温で高圧の物が多く,またサージ圧が高く,衝撃荷重を発生する物も多いのが特徴です。

表1に挙げられた漏れ発生個所は配管フランジ,ホース,ホース継手などが上位にランクされています。製鉄工場では衝撃荷重が頻繁に作用することにより,配管や継手などの締付けボルト類の緩みについては,一般には“増し締め”により対応することが多くありますが,それでも実際には緩みが生じて,漏れを生む場合が多くあります。

またホースとあるのは衝撃など繰り返し荷重がかかることによりホースがバーストすることによる漏れ(漏れというより噴出というべきです)で,2つの現象が含まれています。

1番目はホースの内圧が原因でホース自身の耐久性によりバーストするもので,この防止には疲労破壊を予測する必要があります。

2番目は繰り返される衝撃などの荷重によりホースが他の要素やホース自身の他の個所に繰り返し接触することによる累積摩耗によるバーストです。

製鉄所では火災防止のために水グリコールなどの難燃性作動油が多用されています。このためシールと作動油の適合性が問題となり,鉱油系作動油を使用する場合に比べて漏れ発生の可能性が高くなります。

蒸気や多湿性による配管の腐食なども漏れの原因として挙げられています。

(2)自動車製造

自動車製造は油圧装置や機械加工用多種類の工作機械で構成されており,代表的な組み立て業であります。その製造工程は機械加工ラインや組み立てラインなどで成り立っています。それらは現在ではほとんどが省人化あるいは無人化が極限まで追及された工程となっており,その結果油漏れは極力避けられるように対策された業種であるといえます。

漏れの発生個所としては図1に示すように継手部が圧倒的に多いことから,漏れ対策項目として

1.油漏れのない継手
2.高圧化対応継手
3.配管施工の簡易化
4.薄肉管用の継手
5.組み付け検査のしやすい継手

などを取り上げ,継手のコンパクト化,耐震性能の向上,締め付けトルクの低減化,配管ピッチの縮小などの対策をとっています。そのことにより,機械工場における油漏れの問題はほぼ解決したことが担当者から明らかにされています。

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鋳造工場では油漏れの最大の原因はホースのバーストによるもので,定期的に交換することになっています。それでも比較的多く発生するということです。

(3)射出成形機

ここで射出成形機というのは射出成形機を用いるプラスチック加工業ということです。この分野も製品の油汚れを嫌うため,油漏れが問題となります。

また,プラスチック加工業では,機械の周囲には樹脂性粉塵が多く,シールやシリンダの摩耗が問題となります。射出成形機は比較的使用最大圧力およびサージ圧力が高いことも注意を必要とします。

(4)建設機械

建設機械は油圧系が高圧,高温であり,そのうえ屋外それも粉塵の多い所で使用される機会が多く,またこのところ地球環境問題が厳しい議論を呼んでいますが,この観点から油漏れ=0が求められており,ロッド表面に生じるニジミ程度の漏れであっても嫌われる状況になります。

また世界規模で考えると,寒冷地仕様が必要とされるとともに熱帯地仕様も必要とされるなど,幅広い条件あるいは仕様の設定を満足しなければなりません

建設機械も比較的使用最大圧力およびサージ圧力が高いことも注意を要します。

漏れ部位は継手,ロッドシール,しゅう動部などが挙げられており,課題は高圧化におけるロッドシール(パッキン)の漏れと継手の長寿命化です。

(5)試験機

試験機そのものは個々に設定される条件は全く異なっており,一概に統一的なことはいえません。

また。試験機を使う環境は工場と違う室内環境が圧倒的に多く,そのため室内の清浄化が求められ,微少な漏れであっても問題とされることがあります。

(6)工作機械

工作機械は自動車のところで見てきたのとほとんど同じ傾向と思われます。

工作機械では切粉や研磨粉そして水など他の流体がシール部に入り込むことがあり,シーリング特性に影響を与えます。

2. 油漏れが発生する主要な機器

図2に製鉄設備における油漏れの発生の主な機器と部位を示します。この図は多くの業種に共通のものであるといえます。

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製鉄設備における油漏れ発生の主な機器と部品
図2 製鉄設備における油漏れ発生の主な機器と部品

油漏れはシリンダー,配管,ポンプで発生し,それぞれの発生部位および部品は図に示すとおりです。漏れの問題ではパッキンやオイルシールが挙げられるのは予測できると思われますが,ホース部,ねじ込み部,溶接部などがオイルシールよりも大きな割合で漏れが発生することがわかります。


(1)漏れた個所の確認

漏れた個所を確認する必要があります。外観的にすぐ思いつく所でない所から漏れが周り込んでいる場合があるからです。その確認方法はまず漏れたものが何か,をしっかりつかむ必要性があります。例えば組み付け時につけたグリスが熱によって流れ出てきたのを,内部の油の滲みとしてしまう場合などです。もし組み立て図がある時は,他の場所からの可能性についても検討してみる必要があります。

(2)どのように漏れ始めているかを見る

1. まず時間経過と漏れ量の変化についても近くの作業者に確認しておくと役に立ちます。
最初から漏れていた,徐々に漏れが増えていた,ある時間たってから漏れ始めたの3種類に分けられます。(表1)
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2. 次に漏れの程度についての確認をする。(表2) 時間当たりの漏れ量等がそれです。
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3. 漏れの起こる時の状況を確認する。
漏れがある条件の下で起こることが分かることがあります。例えば低温時に漏れる,高温時に漏れる,これらの条件と推定される原因との関係を表3にまとめました。
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(3)補修部品を用意する

漏れが起こったと推定されるシールの補修部品を用意するのはもちろんですが,どのように漏れるのか調査した結果を元に,必要と思われる他の部品についても用意をしておくと良いでしょう。

(注)シールは組み付けが肝心なので組み付け方法もあらかじめ確認しておくことをお勧めします。機械製作会社に問い合わせることができなくても,シールの品番が分かる場合,シールメーカーに問い合わせることもできます。

(4)分解する

分解すると当然使用したシールを取り出すことになりますが,取り付いていた部分を調べることも忘れてはならないものです。シールが取り付いていた部分ではしばしば摩耗や噛りが見られます。この部分を放置したままで,単にシールを交換しても初期の能力に回復することはできません。

シールの状態は摩耗,傷,変形,硬さ等を調べます。その際,新品と比べるくらいでいいと思います。シールがどのくらい摩耗しているのか,漏れにつながるような傷はないか,圧力による変形はどの程度か,弾力性はどのくらい変わっているのか等見るようにしたいものです。(表4)
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(5)補修をする

補修はシールを交換するばかりではなく,シールの取り付いていた部分やシールが接触していた部分を改修することを含みます。この部分がなされていないと,前回の補修サイクルよりかなり短いサイクルで,また補修をしなくてはならない場合や漏れが止まらないことがあります。

(6)試運転する

(7)補修記録をつける

補修記録には,補修内容を記載すると同時に,時間的に補修できなかった点についても記載することを勧めます。その補修できなかった部分が原因で,再補修になる場合がありますのでその部分の準備をしておく必要があります。

今まで述べた補修作業の仕事の流れをまとめたものを図1に示します。
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※掲載協力 ジュンツウネット21

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